EAT治療

当クリニックでEAT治療を行っています。

「EAT(上咽頭擦過療法)」は、今までの治療では改善しづらい、肩こり、めまい、慢性疲労、自律神経失調など、いろいろな症状に効果がある可能性があります。


※コロナ後遺症へのEAT治療の効果が英文誌「Viruses」に発表されました。
コロナ後遺症治療の新しい方法としての可能性:上咽頭擦過療法(EAT)
抄録: https://www.mdpi.com/1999-4915/14/5/907
全文PDF Version: https://www.mdpi.com/1999-4915/14/5/907/pdf
本報告では、上咽頭内視鏡所見の経時的変化と症状変化を追うことが出来、1ヶ月(4回)のEATにて両者の改善を得ることが示されました。

慢性上咽頭炎とEAT治療 -「なにか変だ」に対する治療

「頭痛や肩こりにいつもいつも悩まされている」、「いつも、異常に疲れていて、寝つきも悪い」、「いつもたんがらみが取れず、のどがイガイガする」、「感情の起伏が激しい」、「ゆううつでやる気が出ない」、「便秘と下痢をいつも繰り返している」、「検査をしても異常がなく、不定愁訴と言われ安定剤を処方されたが、不調が治らない」・・・

「なにか変」なんだけど、なかなかその原因がわからず、いつもすっきりしないこれらの症状の原因は慢性上咽頭炎上咽頭かもしれません。

上咽頭について

上咽頭は鼻の一番奥、のどの入り口部分にあります。気が合流し、呼吸によって左右の鼻から入った空肺へ向かって流れが変わる場所です。上咽頭には多くのリンパ球(ウイルスなどの異物を攻撃する白血球の一種)が存在し、細菌やウイルスなどの異物から体を守る役割を果たしています。また、上咽頭は自律神経である副交感神経の主体となる迷走神経が分布しています。迷走神経は脳の延髄というところを出発し、頭~頸部、胸・腹部などすべての内臓に分布していて、その働きを調整しています。

慢性上咽頭炎について

上咽頭はウイルスなどの異物と最初に接触する場所と考えられ、そこはいつも戦いが起きている場所であるといえます。そのため、上咽頭は炎症が起こりやすく、その炎症が慢性化すると、さまざまなトラブルが出現します。

慢性上咽頭炎の原因

  1. 細菌やウイルス感染
  2. 花粉や粉じん、黄砂、タバコ
  3. 冬の寒さや夏の冷房による冷え
  4. 疲労
  5. ストレス
  6. 空気の乾燥
  7. 鼻閉を起こす疾患(アレルギー性鼻炎など)
  8. 後鼻漏を起こす疾患(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎など)の影響
  9. 逆流性食道炎

慢性上咽頭炎から引き起こされる症状や疾患

上咽頭は重要な免疫機能を果たす場で、また自律神経の主体となる迷走神経が分布しています。そのため慢性上咽頭炎になると、のどの違和感や肩こりなどの咽頭炎による直接症状の他に、自律神経の乱れからくると思われる症状、またIgA腎症などの免疫機序を介した2次疾患など、一見関連がなさそうな様々な症状の原因となる可能性があります。
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咽頭炎による直接症状(放射痛を含む)咽頭違和感、後鼻漏、咳喘息、痰、首こり、肩こり、頭痛、耳鳴り、舌痛、歯の知覚過敏、多歯痛、顎関節痛など
自律神経系の乱れを介した症状全身倦怠感、めまい、睡眠障害(不眠・過眠)、起立性調節障害、記憶力・集中力の低下、過敏性腸症候群(下痢・腹痛など)、機能性胃腸症(胃もたれ、胃痛など)、むずむず脚症候群、慢性疲労症候群、線維筋痛症など
病巣炎症として免疫を介した二次疾患IgA腎症、ネフローゼ症候群、関節炎、胸肋鎖骨過形成症、掌蹠嚢疱症、乾癬、慢性湿疹、アトピー性皮膚炎など
堀田修 「道なき道の先を診る」2015年. 医薬経済社

慢性上咽頭炎の治療について

当院では慢性上咽頭炎に対してEAT治療(上咽頭擦過療法)を行います。0.5%~1%の塩化亜鉛溶液を染み込ませた綿棒を用いて、鼻とのどから直接上咽頭に薬液をこすりつける治療法です。塩化亜鉛は消炎作用や抗ウイルス作用などがあり、塗布することで、炎症を抑えることが期待されます。治療時間は1分程度ですが、軽くこすっても効果はなく、強く、まんべんなくこすることが重要です。上咽頭に炎症がある場合には痛みや出血がみられることがありますが、その分高い治療効果が期待できます。週に1-2回、10-15回続けてみて、効果を確認します。先ほどの表で述べた、慢性上咽頭炎から引き起こされる症状や疾患はEAT治療で上咽頭の炎症を治すと、改善が期待できます。  


EAT治療により、3つの効果があると言われています。
  1. 薬剤による上咽頭の消炎効果:抗炎症作用による上咽頭の炎症を鎮静化
  2. 瀉血(しゃけつ)作用:慢性上咽頭炎でみられる上咽頭の高度なうっ血状態は脳の老廃物を脳脊髄液から静脈系への排泄やリンパ流の機能を低下させるであろうことから、これらの改善に寄与すると言われています。
  3. 迷走神経刺激反射:迷走神経が通る上咽頭はEATに伴う迷走神経刺激によりこの治療に伴う様々な症状の改善と密接に関与している可能性があります。 EATの効果はこの3つの機序に大別されており、後鼻漏や頭痛、咽頭違和感、咳、微熱などの改善は主に①と関連します。また、だるさやめまい、睡眠障害などの自律神経障害による症状の改善には②と③の機序が関与します。
治療終了の判断基準は
  1. 症状が気にならない程度になった
  2. 綿棒に血液が付着しなくなった
  3. 治療時のしみる感じがなくなった
の点ですが、①を重要視します。
EAT治療は決して気持ちの良い治療ではないのですが、辛い症状が改善する可能性があります。自分は当てはまるかな、と考えた方は、ぜひご相談ください。
慢性上咽頭炎とEAT治療について、詳しくは、日本病巣疾患研究会のホームページをご覧ください。

また、参考図書として
「自律神経を整えたいなら上咽頭を鍛えなさい」
堀田修 著  世界文化社  2020
日本病巣疾患研究会の理事長でもある堀田修先生は私の母校の防衛医科大学校の先輩で、この分野の治療について中心的に活躍されています。
堀田修クリニック